忙しい人 / 面倒くさがりの人ための『プレGTD』
『inbox』だとか『レビュー』だとか、何かと専門用語の多いGTD。
そもそも正式名称の『Getting Things Done』自体が、英語が苦手な人にとって「なんじゃそりゃ」ってなもんですが、いざ始めようと思っても、その説明の多さにうんざりしてしまった人も多いはず。
そんな人のため、厳密なGTDとは違うけれど、そのエッセンスは感じ取れるかもしれない『プレGTD』を考えてみました。
『プレGTD』とは
「あまりに忙しくて、初手の『収集/把握する』が、まずできない」「GTDやるのに、なんかアプリとか必要なんでしょ?(※必ずしも必要ではありません) 私、そういうの苦手だから無理だわ」っていう人のために、極力、時間も手間もかけず、紙とペンだけでできるような『GTDもどき』を、私の独断で考えて提唱してみます。
GTDを体験してみたいけれど、小難しそうで二の足を踏んでいる方、どうにもタスク管理とか七面倒くさいことはやりたくないという方、とにかく何をするにも忙しくて『収集/把握する』時間や『整理する』時間がとれそうにないという方々、ものは試しにやってみませんか。
そもそも『GTD』って何?
平たく言うと、頭の中の気になっていることすべてを脳の外部に追い出して記録し、適切なタイミングで思い出せるように整理。
頭を空っぽにして、今、目の前にあることに集中できる環境を整えましょう。……というもの。
詳しい内容は以下のエントリーをご覧いただくか、原典をあたってください。
原典
このGTDをしっかりやろうと思えば思うほど、『頭の中の気になっていることすべて』を脳の外に追い出す作業が難しくなっていきます。
将来の夢、いくつも抱えたプロジェクト。
求められる家庭での役割とそれを果たしたい自分。
迫り来る配偶者の誕生日。
靴も鞄もくたびれ、そうこう言っている間に衣替えの季節。
家に帰れば、たくさんのDMに紛れて、竹馬の友の結婚式の招待状。
お祝いのメールを送ろうかとアプリを開けば、未読メールの山が十数件。
──ああ、そういえばあのプロジェクトに関するメールの返信、今日まで送れって上司に言われていたっけ。
そう思って資料を探すためにパソコンを立ち上げれば、Skype通知が現れ、新たな仕事依頼があなたのもとに舞い込んでくる。
……と、まあ。
このように過去にやらなきゃいけなかったけれど放っておいたことや、今現在やりたいこと、今後やらなくちゃいけないことなど、あらゆることを頭の中『だけ』で把握しようとすると、それだけで煙を吹いて倒れてしまいそうです。
仕事、学業、家事、家庭、将来の夢、人間関係、健康、資産管理……本来のGTDであれば、これらを一回で本当にすべてを把握しようとするのですが、あらゆる情報を引っ張りだすのが大変ですし、時間が掛かるし面倒くさいです。
しかしながら、GTDの効用も捨てがたい。
そこで、とりあえず目先の気になることを吐き出して、『頭の中の気になること』を地道に、そして着実に消していこうとするのが、今回の『プレGTD』です。
やり方
用意するもの
紙とペン。
まずはお試しですので、チラシの裏でも構いません。
続けていけそうと思ったら、そのうちノートとか手帳、アプリとかに変えてみてください。
手順
- 紙とペンを用意し『やること』『やりたいこと』を20個書き出す
- 一覧をじっくり眺めて、取り掛かる必要のないものは線を引いて消す
- 書きだしたものの中で、2分で終わらせられるものがあれば、すぐに実行して終わらせる
- やることが2つ以上あるものは、別の紙に大まかに細分化した『やること』を書く
- 今日から3日間のうちに取り掛かりたいタスクを5つ選ぶ
- 選んだタスクから順に実行していき、5つやり終えたら、改めて5つ選ぶ
- 一週間または二週間経過したら、改めて紙に『やること』『やりたいこと』を20個書き出す
『やることリスト』は、できれば日常的に持ち歩き、「手空いたけれど、次は何するんだっけ?」という時にすぐ見返せるようにしておきましょう。
もしも「突発的に、やらなきゃいけないこと」が発生した場合は、それを紙に書いて実行。
やり終えたら線を引いて消し、改めて「さっきまでやっていたこと」または「次にやること」へと取り掛かってください。
20個書き出すのも、自分のさじ加減で適度に増減してかまいません。
選ぶタスクも5つで運用に支障があれば、1つでも3つでも。もちろん10個でも。
欠点としては、本家GTDよりもさらにトップダウン・アプローチに弱いこと。
中長期の視点でものごとを見据えるには不向きなやり方ですので、ある程度気軽にできる分、割りきって運用していただければと思います。
『収集 /把握する』を補強する
また『やること』を消化しているのと同時進行で、やってほしいことがあります。
運用している際、「突発的にやらなければいけないこと」が発生したら、その経緯を記録していてください。
その突発タスクが同じ人からよく来るようであれば、その人に何らかの協力を仰ぐか、事前に準備できるよう環境を整える、その人と距離をとるなどすることをおすすめします。
またメールや電話、LINE、Skype、郵便受けなど、どんな窓口から、どんなタスクが発生するかも把握できるようになります。
最初は気軽に頭に浮かんだこと20個を書き出すようにしていましたが、「実はメールの受信箱には重要なタスクが埋蔵されていた」というようなことが何度も重なるなら、次に『やること』を洗い出す際は、メールのチェックをしながら書き出していったほうがいいでしょう。
そんな情報の受付窓口が3個以上あるなら、『inboxリスト』として分かりやすくメモにまとめ、『やることリスト』を更新する度に『inboxリスト』の中身を確認していきます。
実行時にやっておきたいこと
- 記録を取る
- 『把握』しておきたい事柄や物事を、少しずつでも減らしていく
- 自分と相性のいいタスク管理ツール、手法を探しだす
記録を取るということ
この『プレGTD』を運用していくと、紙に書いた『やること』のリストが次々に線で消されていきます。
3日後、5日後、10日後──。
線の引かれた『やることリスト』が何枚もあれば、「こんなにやったんだ」と充足感が得られるはず。
さらに「何をどういうプロセスでやったか」まで記録できるなら、それが今後の類似タスクへアプローチする際の手掛かりとなります。
自分のできる無理のない範囲で、何か適当なもの(手帳とかメモアプリとか)にやったことも記録していってください。
『減らす』ことの大切さ
目新しい商品を知ると飛びつき、何か流行りのものがあればついつい試してみたくなる。
気持は良くわかりますが、人にはそれらを『把握する』ための器が限られています。
アレもコレも……と手を出して、そのどれもが中途半端に終ってしまったという人は、きっと私以外にもいるはずです。
部屋の隅にあるダイエット器具。
引き出しの奥底に眠るハンドメイドの材料。
本棚に埃をかぶっている英語のテキスト。
そういえば新年に買った『10年日記』なるものは、結局10日しか書かなかったな──。
GTDを実践していくと、そのうち時間管理がうまくなってそれらに手を付けられるだけの余裕ができてくるかもしれません。
その時までとっておいても構いませんが、何かを新しく増やしたら、何か手放すよう心掛けてください。
また責任感の強い方ほど、ひとりですべてを抱え込んでしまいます。
──人に頼る、お金で解決する、後回しにする、いっそ「やらない」と決める。
そんな選択肢も存在することを、どうか改めて認識してください。
自分にとって重要でないこと、管理しきれないものから手放し、本当に大切なものに集中できるような環境をつくりましょう。
やっぱりあると捗るタスク管理ツール
GTDは紙とペンだけでできます。
ですが運用していくうちに「カレンダーに締め切りをメモしたい」「この時間帯にリマインダー通知して欲しい」「プロジェクト別のチェックリストがあると便利かも」と、どんどん欲がでてきます。
あくまでシンプルに拘るのであれば、紙とペン以外は必要ありませんが、もしも何かしら試してみたいのであれば、少しずつ試してみてください。
最近のタスク管理用のアプリやWebサービスは、ユーザの要望に応えるため、とても多機能です。
そのすべてにいきなり何もかもを任せる必要はありません。
自分の分かる範囲で、少しずつ利用してみてください。
また、GTDは『集中すべきやること』を選ぶまでのタスク管理手法です。
タスクを効率よく実行するための手法は、また別で用意しなければなりません。
もしも、「よく逃避行動に脱線してしまう」とか「特に理由はないんだけれど集中力が途切れてしまう」というようなことにお悩みであれば、別途、ほかの手法も組み合わせてお使いください。
GTDとも相性が良く、有名なのは『ポモドーロ・テクニック』です。
慣れてきたら徐々に本格的なGTDへ
『プレGTD』を実践していくだけでも、頭のなかのモヤモヤはかなり解消されていくはず。
ですが、先述した「逃避行動に脱線してしまう」「何か気になって集中できない」といった症状が続くようでしたら、それはまだ『頭の中のもやもや』を頭の外に追い出していない証拠でもあります。
一度、『頭の中の気になることすべて』を、きちんと『収集し、見渡して把握する』作業を本腰を入れてやってみることをオススメします。
それ以外の方も、ある程度やることを解決していけるようになったら、本格的なGTDへとステップアップしてみてください。