映画『紙の月』を観た

帯広では3ヶ月遅れての公開です。
最初は映画化されたのをキッカケに文庫化された原作の表紙に惹かれて。

で、映画の予告編を観て、「これは絶対に観る!」と心に決めて、映画館を訪れました。

予告ムービー

感想

正直、「そんなに話題になってないから、面白く無いのかもしれない。そこまで期待値上げないでおこう」と思っていたんだけれど、もの凄い良い意味で予想を裏切られたよ。

前のめりになって観て行くうちに、気づいたら終盤。
宮沢りえ演じる主人公、梅澤梨花の横領が暴かれて終わりかな?…と、思いきや。

梨花の犯罪を突き止めた、小林聡美演じる同僚、より子との会議室でのシーン。
正論でもって「あなたに行けるのは、ここまで」と言ったより子に対して、椅子で窓をぶち破り、さらなる逃走をはかる梨花。

去り際に、振り返って「一緒にいく?」と言ったシーンには、なんかゾクッとしたよ。

映画のキャッチコピー、『もっとも美しい横領犯』も素晴らしいけれど。
原作の文庫化された帯に書かれた映画監督の解説文からの引用がまた良かった。

信じられないスピードで
向こう側へと疾走していく梨花。
世界最大の「ほんとう」を
引きずり出し、たった一人
戦いを挑むその背中。

原作ももちろん面白いんだけれど、監督の解釈がさらに秀逸だったんじゃないかなって思う。

説得力があって、のめり込んじゃう生々しさ

普通に考えて、どこにでもいそうな主婦の契約社員が、銀行から一億円の横領を働いちゃうのが信じられない。
なのに、「こんなの嘘だよ!」って疑いきれない説得力。

これは原作の時点でもリアリティがあったのだけれど。

どうして梨花が最初の不正を働いたのか。
営業先からの帰り道に買い物をしたら、お金が足りず…。
少額だし、すぐ返したし、なんでもないことのようにも思えるのに。

これでタガが緩んでしまったのか、「後で返せばいい」と犯罪を重ねていく。 いつしか、とうてい返せない額まで顧客たちからだまし取っていても止まらない。止まれない。

不倫相手の大学生、光太がそこまでイケメンじゃないのが、また生々しい。
(美人だけれど)地味で大人しい主婦と、パッとしない借金まみれの大学生。この組み合わせで一億円の横領。

生々しいのにセンセーショナル。
センセーショナルなのに、ドラマが存在しない。ただ欲望に身を任せ、不倫して挙句に別れた。

梨花曰く、「ありがち」な展開しか、この二人にはない。
でも、それでも梨花は一直線に、脇目も振らずに犯罪を重ねて、ひとり破滅の道を突き進んでいく。

少し前に流行った昼顔妻を嘲笑うかのように、罪悪感も背徳感も感じさせずに、ただ会って、肌を重ねて、お金を遣いまくる。

とうてい共感など覚えない。だけれど、目が離せない、その行動力。
本当に止まらないんだ、主人公が。ビックリするくらい一途に犯罪を重ねていく。

ジェットコースター級…とまでは、いかないけれど、かなりハイスピードでテンポよく話が進んで、気づいたらドツボにハマって戻れない状態?
でもって、主人公が反省もせず、詫びも入れないという、なんか爽快感?

変に同情を求めてお涙頂戴に落とさない清々しさ。
アッパレなまでの往生際の悪さといい、なんか凄く新鮮で面白かった。

記号的な『悪人』のいない悲惨さ

今、ヤスケンが女装して演じているドラマ『問題のあるレストラン』では、「今どき、こんな人達いる?」ってくらい、都合よく主人公たちを追い詰める、解りやすいカタキ役がいるのに対して、この映画では、絶対的な『悪い人』がいないという、救いの無さ。

主人公の夫は、無自覚にマウンティング行為に及んでくるも、無自覚さ故に悪気は皆無。
しかも普通に考えて、これくらいの男尊女卑なら、許容範囲かな?ってレベルの行為。

梨花の不倫相手である光太も、金銭感覚が狂って、次第にダメになっていくものの、最後はうすうす気付いてた疑問や不安を口にし、梨花の口から別れの言葉を引き出した。

エロジジイで底意地悪そうな光太の祖父でさえ、梨花の色仕掛け乗せられらず、「ノルマ厳しいのか?」と心配する素振りを見せる。

梨花の犯罪を突き止めたより子も保身のため、正義のためであって、梨花を貶めようとしているわけではない。

悪意らしい悪意が存在しないのだ。主人公の梨花ですら。

ただ小さなことが積み重ねで、フラッとやってみたら出来ちゃった。
バレる?バレない。バレなかった。バレそう。バレない。まだ続けられる。バレるまで止められない。まだバレない。止められない。

粛々と淡々と華々しく突き進んでいく梨花の行動も、最後はもう光太を手放しているのに自分のやったことを隠すためにキリキリになりながら物語が進んでいく。

最後に、主人公がどうしてこんな事をしたのか。
なんか「偽物だから」とか、よく意味がわからない理屈を並べていて私は理解ができなかったけれど、でもだからこそ面白いと思えたよ。

不遇の立場に追いやられている主人公が、光太という希望を手に入れて、彼のために一心不乱に犯罪を重ねるのでは絶対にない。

犯罪を犯す都合の良い言い訳を、この物語では用意されてない。

だから共感できないし。
でも、自分は絶対にそこに陥らないか?と、問われればそうとも言い切れないっていう怖さがあったよ。

その他にも、梨花の学生時代のエピソードとか絡めて話すと、とんでもなくエントリーが長くなっちゃうので、ここでは割愛。

面白かった!

紙の月 DVD スタンダード・エディション

紙の月 DVD スタンダード・エディション

ポニーキャニオン

評価: 5つ星のうち2.9 2.9

発行日: 2015-05-20

価格: ¥ 3,036(新品)

Amazon.co.jpでCheck!!

あとがき

ちなみに、引き合いに出したドラマ『問題のあるレストラン』も楽しんで観てるよ。

最初の頃はストレス溜まるわ、傷つくわで観ているのが辛かったけれど、「最後はスカッとさせてくれるかな?」と思いつつ、安田さん目当てで見続けてる。
ヤスケン、まじ女神。

あと喪服ちゃんと自称恋愛依存症のあの子いいよね。
二人それぞれのセリフが面白い(・∀・)